技術コラム

PLATEAUの3D都市モデルを用いたArcGIS Proでの可視領域解析

サマリー

ArcGIS Proと国土交通省「PLATEAU」が提供する3D都市モデルを組み合わせ、大阪城天守閣がどこから見えるかを解析しました。ArcGIS Proでは、Living AtlasからPLATEAUの都市モデルをそのまま読み込み、対話的な「可視領域解析」が可能です。今回は大阪城天守閣の屋根を視点とし、360度・2km圏内の見通し範囲を可視化した結果、公園や高層建物など立地による視認性の違いが明確に確認できました。PLATEAU×ArcGIS Proは、眺望評価、日射・災害・景観など都市DX領域で幅広く応用可能です。

用語解説

  • ArcGIS Pro:ESRI社が開発したデスクトップGISソフトウェア。地理情報や関連情報を使った可視化や解析などの豊富な機能を備えており、世界中の様々な団体・企業・公共機関で利用されている。
  • PLATEAU:国土交通省が推進するプロジェクトで、日本全国の都市を3D都市モデルとして整備し、オープンデータとして公開している。またこれを活用した様々な領域を対象としたユースケースの開発もおこなわれている。このように、3D都市モデルの整備・活用・オープンデータ化を通じて、まちづくりのDXの実現とオープン・イノベーションの創出を目指しているのがProject PLATEAUである。
  • 可視領域:地理空間情報システム(GIS)では、「ある地点から見える範囲」もしくは「ある地点を見ることができる範囲」を意味する。

記事本文

ArcGIS ProにPLATEAUで公開されたデータを読み込んで可視領域解析をおこないます。今回は大阪市の3D都市モデルを用いて、大阪城天守閣の屋根が見える領域がどこまでかを解析してみます。

PLATEAUデータの入手・読込

PLATEAUの3D都市モデルは、G空間情報センターのPLATEAUオープンデータポータルサイトから入手できます。また3D都市モデルのフォーマットであるCityGMLを、他の一般的なGISデータ形式に変換するソフトウェアも公開されています。

なおArcGIS Proの保守が有効なお客様は、Living Atlasに登録された「PLATEAU」の3D都市モデルを読み込むことも可能です。
※3D都市モデル(Project PLATEAU)の建物データ(LOD1、LOD2)をもとにESRIジャパンが加工し、3D都市モデルのWebシーンレイヤーとして公開したもの

今回はArcGIS Proから手軽にPLATEAUデータを読み込むことを目的として、Living Atlasの「大阪市 3D都市モデル(Project PLATEAU)」を読み込んでみました。

LIVING ATLASから目的の都市をシーンに読込

LIVING ATLASから目的の都市をシーンに読込

ArcGIS Proに読み込まれた大阪市の街並み1(新大阪付近)

ArcGIS Proに読み込まれた大阪市の街並み1(新大阪付近)

ArcGIS Proに読み込まれた大阪市の街並み2(十三付近)

ArcGIS Proに読み込まれた大阪市の街並み2(十三付近)

ArcGIS Proに読み込まれた大阪市の街並み3(大阪城周辺)

ArcGIS Proに読み込まれた大阪市の街並み3(大阪城周辺)


天守閣からどこまで見えるか

ArcGIS Proを用いた可視領域の解析には、用途に合わせていくつかの方法が用意されていますが、今回は「探索的3D解析」→「可視領域」を使用してみます。

<設定>

可視領域の距離を2000メートルに設定し、作成方法は「対話的に角度を設定」にしました。ArcGISProで「探索的3D解析」の「可視領域」を選択

可視領域の距離を2000メートルに設定し、「対話的に角度を設定」を選択

観測点をクリックしたあと、次のクリックで可視領域を解析する方向を指定します。観測点をクリックしたあと、次のクリックで可視領域を解析する方向を指定

<結果>

可視領域が緑、不可視領域が赤で表示されています。画像Aのように、高い建物の少ない大阪城公園駅方向に視線を向けた場合は比較的遠くまで見通せることが分かります。

高層ビルが林立する大阪ビジネスパーク(OBP)方向に視線を移すと、建物に遮られて可視領域が近い範囲に限定されてしまう

一方、画像Bのように、高層ビルが林立する大阪ビジネスパーク(OBP)方向に視線を移すと、建物に遮られて可視領域が近い範囲に限定されてしまうことが分かります。

どこから天守閣が見えるか

今度は逆に、大阪城天守閣の屋根が見える領域を解析してみます。

<設定>

大阪城天守閣の屋根を観測点として、可視領域の水平角度を360度、可視領域の最大距離を2000mに設定してみました。天守閣の屋根を観測点として、可視領域の水平角度を360度、可視領域の最大距離を2000mに設定

<結果>

大阪城公園・桜之宮公園・難波宮跡といった視界が開けた場所からはよく視認できる一方で、建物の陰に入ってしまう場所では大阪城を見通すことは難しい

画像Dのように真上から見ると分かりやすいですが、大阪城公園・桜之宮公園・難波宮跡といった視界が開けた場所からはよく視認できる一方で、建物の陰に入ってしまう場所では大阪城を見通すことは難しいようです。またところどころに点在する緑の領域が示すとおり、距離が離れていても周囲より背の高い建物からは見通しが確保されることが確認できます。

可視領域の活用

このようにArcGIS ProとPLATEAUの3D都市モデルを組合せると、実在する都市における対話的な可視領域の解析が簡単におこなえます。もちろんPLATEAU以外の3Dデータを読み込むこともできるので、下記のようなシミュレーションに活用できます。

  • 新築予定のマンションからの眺望領域のシミュレーション
  • 監視カメラからの死角ヒートマップ
  • 5G/ミリ波基地局の視通性評価

他の活用シーン

今回は「可視領域解析」を例としてご紹介しましたが、「PLATEAU」データとArcGIS Proを組み合わせることで、以下に挙げるシーンをはじめ様々な活用が可能です。

  • 建築物への日射量の分析
  • 建築物と洪水・津波・高潮などの浸水想定を重ねあわせた被害想定の3Dでの可視化
  • 都市景観シミュレーション

おわりに

当社アサミ情報システムは、「PLATEAU」のProject Partnerとして、3D都市モデルのデータ整備などに取り組んでいます。また、ESRI社のパートナーとして、ArcGIS Proを含む様々なGIS製品の販売・サービス提供をおこなっています。さらに、「PLATEAU」などの地理情報を用いた、図面作成や分析解析・データ作成などのサービスも提供しています。

お問い合わせ

当社の製品・サービスに興味をお持ちでしたら、ぜひとも以下のフォームからお問合せください。
お問い合わせフォーム

関連ページ

GIS – アサミ情報システム株式会社|GIS/3D/CityGML

CityGMLから”屋根の3D表面積”をFMEで集計し、建物属性に付与 – アサミ情報システム株式会社|GIS/3D/CityGML

※記事中の画像は、ArcGIS Proの操作画面をキャプチャしたものです。
※表示内容には、ベースマップ(背景地図)やPLATEAUの3D都市モデルが含まれます。

国土交通省 PLATEAUウェブサイト:https://www.mlit.go.jp/plateau/
ベースマップの権利情報:
GSI, Esri, TomTom, Garmin, GeoTechnologies, Inc, METI/NASA, USGS, Sources: Maxar, Airbus DS, USGS, NGA, NASA, CGIAR, GEBCO, N Robinson, NCEAS, NLS, OS, NMA, Geodatastyrelsen and the GIS User Community, Sources: Esri, Maxar, Airbus DS, USGS,NGA, NASA, CGIAR, N Robinson, NCEAS, NLS, OS, NMA, Geodatastyrelsen, Rijkswaterstaat, GSA, Geoland, FEMA, Intermap, and the GIS User Community
ArcGIS ProはEsri社の登録商標です。

関連記事

TOP