技術コラム

ExcelでのPDF台帳入力の課題と、専用アプリによる解決事例

この記事のポイント

PDF台帳をExcelへ転記する業務の負担を減らすため、原本を見ながら入力できる専用アプリを開発しました。OCRによる入力支援と実績の自動集計を組み合わせ、対象案件では入力時間を約80%削減しました(作業実績に基づく概算)。

要点サマリ

行政の許認可・届出に関するPDF台帳をExcelへ転記する業務では、入力ミスに加え、複数人のデータ統合や進捗集計が負担になっていました。そこで、原本PDFの表示、OCRを使った入力支援、担当者管理、進捗レポートを一つのアプリにまとめました。対象案件の作業実績に基づく概算では、入力時間を約80%削減しました。作業者が原本を確認して保存する運用により、入力から進捗把握までを一元化しています。

用語解説

  • OCR:画像やPDFに書かれている文字を読み取り、パソコンで使える文字データに変換する技術。紙の書類や帳票の内容をデータ化するときによく利用される。
  • LLM(大規模言語モデル):文章などを扱う生成AIの基盤となるモデル。本アプリでは、OCRで読み取った文字情報の補正を支援するために利用する。
  • CSV:表計算ソフトやシステムで扱うデータを保存するためのファイル形式。情報が行と列で整理されており、異なるシステム間でデータを受け渡す際によく利用される。
  • ダッシュボード:データや集計結果をグラフや表で見やすく表示する画面。必要な情報をひと目で確認できるため、状況の把握や分析に役立つ。
  • データベース:情報を整理して保存し、必要なときに検索したり活用したりできる仕組み。住所録や顧客情報の管理などにも利用される。

ExcelによるPDF台帳入力の課題とは何か

Excelによるデータ入力は導入しやすい反面、運用が複雑になるほど管理負担が増加します。特に複数人での入力作業や進捗管理では、Excel特有の課題が顕在化しやすくなります。

解説

今回対象となったのは、行政への届出書類に関する情報が記載されたPDF形式の台帳をデータベース化する業務です。PDF台帳をデータベース化する案件では、長年にわたりExcelへの手入力方式を採用していました。作業者はPDFを確認しながら必要情報をExcelへ転記し、最終的に完成したデータを集約する運用です。

しかし、この運用にはいくつかの課題がありました。

  • 入力時に誤って別の行を編集してしまうなど、ヒューマンエラーが発生しやすい
  • 複数名が入力したExcelファイルを統合する作業が必要
  • 入力用Excelとは別に進捗管理表を作成・管理する必要がある
  • Excel操作スキルの個人差により、教育に時間を要する
  • 案件規模が大きくなるほど、入力以外の管理工数が増加する

このように、データ入力そのものだけでなく、ファイル統合や進捗管理、作業者教育などの付随業務にも多くの時間と手間がかかっていました。

専用入力アプリはどのように課題を解決したのか

課題解決のため、入力業務に特化した専用アプリを開発しました。入力から進捗管理までを一元化することで、複数のExcelファイルに依存しない運用を実現しています。

解説

開発したアプリでは、作業対象となるPDFをシステムへ取り込み、入力画面内で閲覧できるようにしました。

画面右側にはPDFの原本が表示され、左側には入力フォームが配置されています。作業者は画面を切り替えることなく内容を確認しながら入力作業を進められるため、視線移動やファイル切り替えによるロスを削減できます。

PDFを登録すると、あらかじめOCRで文字情報を読み取ります。作業者が右側のPDF上で必要な範囲をドラッグすると、その範囲の認識済みテキストをクリップボードへコピーできます。左側の入力欄へ貼り付け、原本と照合して誤認識や表記を修正することで、全文を手入力する負担を減らせます。

また、OCRの認識結果を社内環境のLLM(大規模言語モデル)で補正する機能も備えています。

手書き台帳2ページの51項目を対象とした検証では、確認値の一致率はOCRのみの62.7%から、LLM補正後の84.3%へ向上し、不一致の項目を約58%削減しました。これは検証対象の項目に限った結果であり、全文の文字認識率を示すものではありません。補正後も作業者が原本を確認してから、入力内容を確定します。

今回の対象案件では、入力時間を約80%削減しました。Excelで入力していた頃は1件あたり約5分かかっていた作業が、専用アプリでは約1分となった、作業実績に基づく概算です。台帳の種類や記載量、原本の状態によって所要時間は変わるため、すべての案件で同じ削減率になることを示すものではありません。

また、台帳の情報を1件ずつ入力する形式にし、Excelの行やセルを直接編集する際の行ずれを起こしにくくしました。入力した内容は、作業者が保存操作を行うとデータベースに記録されます。保存済みのデータは、指定した列構成のExcelファイル(.xlsx)として出力できます。

さらに、作業者名や作業日時も自動記録されるため、「誰が」「いつ」「どのデータを入力したか」を後から確認できる環境を整備しました。

PDF入力画面。左側の入力フォームと右側の原本PDFを見比べながら入力する。
PDF入力画面。左側の入力フォームと右側の原本PDFを見比べながら入力する。

ダッシュボードによる進捗管理の一元化とは

進捗レポートでは、入力完了件数や作業者別の実績、実績を基にした完了見込みをグラフと表で確認できます。入力済みのデータから集計するため、別の進捗管理表へ同じ件数を転記する負担を減らせます。

解説

Excel運用時代は、入力作業とは別に進捗管理表を作成し、手動で実績を集計していました。そのため、管理担当者には定期的な状況確認や報告資料作成の負担が発生していました。

新しいアプリでは、保存された入力実績を基に、全体の入力完了率、書類別・日別・作業者別の実績を進捗レポートに表示します。日別の入力完了件数は初回の入力完了時点で集計し、後日の上書き修正によって実績日が移動しないようにしています。

また、直近の作業実績から完了見込みを算出し、作業配分を見直すための参考にできます。集計表はCSV形式でコピー・ダウンロードでき、報告資料にも利用できます。最新の状況はレポートを更新して確認します。

入力完了と管理者による確認済みを分けて把握できるため、入力が終わっていても確認が残っている資料を見つけやすくなります。

進捗レポート。入力完了率、確認状況、書類別の進捗をグラフと表で表示する。
進捗レポート。入力完了率、確認状況、書類別の進捗をグラフと表で表示する。

専用アプリ導入で得られた効果とは

入力作業と管理業務を一元化したことで、業務全体の生産性向上につながりました。特に作業時間の削減と品質向上が大きなメリットです。

解説

専用アプリの導入により、これまで複数のExcelファイルで管理していた業務を1つのシステムへ集約できました。

入力作業ではOCR活用による時短効果が得られ、管理面では進捗確認や実績集計の自動化が実現しています。また、入力履歴が自動で記録されるため、トレーサビリティの確保や品質管理も容易になりました。

作業者にとっては入力業務へ集中しやすくなり、管理者にとっては状況把握や進行管理が容易になるなど、双方にメリットがあります。

今後もデータ入力業務では、単純な作業効率化だけでなく、管理業務を含めた全体最適化が重要になると考えています。

FAQ

Q1:既存のPDF台帳からデータベースを作成することは可能ですか?

A:可能です。
PDFデータをアプリへ取り込み、入力フォームを利用してデータベース化できます。PDFの品質によってOCR認識率が変わるため、最終的には人による確認作業を推奨しています。

Q2:作業者が複数人いても運用できますか?

A:可能です。
各作業者の入力履歴や実績を個別に記録できます。管理者が資料単位で担当者を割り当て、作業者は割り当てられた資料を入力する運用です。同じレコードを複数人が同時に編集しないよう制御し、担当範囲や編集の競合を管理します。

Q3:入力したデータはどのように利用できますか?

A:Excelファイル(.xlsx)として出力できます。
出力する項目や列の順序を設定し、集計や他システムへの受け渡しに利用できます。進捗レポートの集計表は、CSV形式でコピー・ダウンロードできます。利用先の仕様に応じて、項目や形式の調整が必要になる場合があります。

Q4:この入力支援アプリを利用したい場合は、どうすればよいですか?

A:当社ホームページのお問い合わせフォームからご連絡ください。
対象の台帳の種類や件数をお知らせいただければ、運用方法をあわせてご提案します。

まとめ

本記事では、PDF台帳のデータベース入力業務を効率化するために開発した専用アプリの取り組みをご紹介しました。要点は以下の3つです。

  • Excel運用では入力ミスや進捗管理などの課題が発生していた
  • PDF表示・OCR・入力フォームを一体化した専用アプリを開発した
  • ダッシュボードによる進捗管理の自動化で管理工数を削減できた

データ入力業務を効率化したい場合は、まず現状の入力作業だけでなく、進捗管理やデータ統合作業まで含めて見直してみてください。

PDF台帳のデータベース化や入力業務の効率化についてお悩みでしたら、お気軽にお問い合わせください。
お客様の業務内容に合わせた最適な運用方法をご提案いたします。

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