3D都市モデルの整備を検討する自治体担当者の中には、「費用をかけて整備しても、行政実務にどう役立つのか分からない」と感じる方もいるのではないでしょうか。3D都市モデルは、防災・都市計画・住民説明などで、都市の状況を立体的に分析・共有するためのデータ基盤です。
本記事では、自治体にとっての主なメリットと、職員が取り組みやすい具体的な活用例を解説します。
3D都市モデルを整備するメリットは?
3D都市モデルを整備する主なメリットは、①立体的な分析による政策判断の高度化、②住民・事業者への分かりやすい説明、③庁内外でのデータ活用の拡大です。活用事例と整備時の注意点を、以下で詳しく解説します。
3D都市モデル整備で得られる3つのメリット
3D都市モデルは、都市を3D表示するだけでなく、庁内の台帳やハザード情報等を重ね、業務判断と説明を支える共通基盤です。主なメリットは次の3つです。
- 政策判断の高度化
浸水深と建物高、開発計画と周辺景観など、2Dでは把握しにくい関係を比較できます。 - 説明・合意形成の円滑化
将来の街並みや災害リスクを、住民・事業者と同じ画面で確認できます。 - 庁内外でのデータ活用の拡大
庁内では部署ごとの重複整備を減らし、照会や協議を省力化できます。
オープンデータ化すれば、企業や大学等によるアプリ開発・分析を促し、自治体が単独でシステムを開発しなくても、新たな住民サービスが生まれる可能性があります。
行政実務で活かせる3D都市モデル活用事例
PLATEAUの公開事例では、「都市計画・まちづくり」が77件、「防災」が32件と多く見られます。
ここでは、既存の行政データを中心に始められ、自治体職員が業務での使い方をイメージしやすい2事例をご紹介します。

集計元:国土交通省 Project PLATEAU「Use Case」(2026年7月21日時点。1件に複数の分野タグが付くため、分野別件数の合計は148件を超えます。)
事例1 都市計画基礎調査情報を活用した都市構造の可視化
職員の使い方
建物用途や土地利用を3D都市モデル上で色分けし、用途地域と実際の建物利用、過去からの土地利用の変化を比較します。立地適正化計画や都市計画マスタープランの検討、庁内協議、住民説明の資料として利用できます。
必要なデータ
LOD1の建築物モデル(都市計画基礎調査の建物利用現況の属性を持つ)、土地利用現況、用途地域等の都市計画決定情報が必要です。既に自治体が定期的に整備している調査成果を再利用できるため、新たな測量行為を行わずに着手しやすい点が特徴です。
自治体への効果
地区ごとの特性や都市機能の集約状況を客観的に把握でき、施策案の比較や関係課との共通認識づくり、再開発等に関する合意形成に役立ちます。
出典:国土交通省 Project PLATEAU「都市計画基礎調査情報を活用した都市構造の可視化」
事例2 垂直避難可能な建築物の可視化
職員の使い方
洪水の浸水想定区域と3D建物モデルを重ね、想定される浸水位と建物の高さ・階数を比較します。最大浸水時にも最上階が浸水せず、緊急的な垂直避難先となり得る建物を抽出・可視化し、地域の防災計画や立地適正化計画の防災指針、民間建築物との防災協定、住民への避難啓発などに活用できます。
必要なデータ
LOD1の建築物モデル(建物高さ、地上階数、構造種別、浸水深、家屋倒壊等氾濫想定区域内木造建物、避難所の属性を持つ)、LOD1の洪水浸水想定区域(浸水位を3D表現したモデル)が必要です。これらの情報を使い、浸水による流出リスクがある木造建物などを除外した上で、垂直避難の可否を判定します。
自治体への効果
垂直避難が可能な建物や、そのような建物が不足している地域を都市全体で把握できるため、避難場所の配置、防災協定を締結する建物の選定、災害リスクが高い地区の抽出などを具体的に検討しやすくなります。また、住民が自宅や周辺の建物で垂直避難できるかを事前に確認でき、早期避難の必要性や地域の防災意識を伝える資料としても活用できます。ただし、垂直避難はあくまで緊急的な避難手段であり、原則として安全な避難所などへの早期避難を促す説明と併せて利用する必要があります。
出典:国土交通省 Project PLATEAU「垂直避難可能な建築物の可視化等を踏まえた防災計画検討」
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